完璧御曹司の溺愛




 電車に乗ってからは、互いの話をした。


 理央は、幼なじみの咲や保健医の三春の話。


 悠斗は、今まで過ごしてきた海外の学校生活や、そこで出来た友人の事。


 悠斗の事なら何でも知りたい。


 悠斗への気持ちを自覚した理央にとって、電車の窓からさし迫る夕日の色が煩わしくなる程、貴重な時間に違いなかった。


 そしてあっという間に、理央の家の最寄り駅に到着しまう。


 駅前から数百メートル先の緩い下り坂の先に、理央の家はある。


 電車の中で交わした互いの話は一旦終了し、二人は歩き始めた。


 外灯に明かりが灯り、人のいない静かな斜面に二人の影が伸びる。


 理央は悠斗に、伝えたい事がある。


 それは『自分も悠斗が好き』という愛の告白。


 けれど、それを告げるのは、まだしばらく先の事だと思っていたから、今ここで実際に声に出すのは、奥手な理央にとって、なかなか勇気がいる事だった。

 
 悠斗は、隣にいる理央が、既に自分を好いてくれている事など知らない。


 昨夜、その気持ちには答えられないと、理央から告げられたばかりなのだ。


 当然、自分が一方的に想いをぶつけているのだと思っている。


 悠斗の理央を愛でる、その態度や行動が、理央の心をどれだけ揺さぶっているか。


 理央が毎回、違った意味の目眩を起こしかけている事も、悠斗は知らない。


 そう思うと、理央のこの大きな気持ちが、どれだけの重みを含むものなのか…


 『好き』だけの簡単な言葉では、自分の気持ち全てを伝えきれないような気がして、理央の喉を余計につまらせた___




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