完璧御曹司の溺愛
私は、悠斗のような愛情ある言葉の表現に乏しい…。
実際、悠斗を前にその2文字を伝えるだけで、理央は恥ずかしさから卒倒してしまいそうだ。
理央の好きと、悠斗の好き。
互いにその気持ちを表現するとなると、悠斗は誰が聞いても惚れ惚れするような魅力的な言葉を贈ってくれるだろう。
でも、理央には何も気の利いた言葉が思い浮かばない。
私だって、悠斗に負けないくらい、悠斗を想う気持ちがあるのに____
そんな、もどかしい気持ちを抱いたまま、あっという間に自分の家についてしまった。
「ここが、理央の家?」
「うん。そうだよ」
元々は、亡き父が学生の頃、人から譲り受けた中古住宅で、母との結婚を機に、二人で暮らし始めたと聞いている。
けして、新しくもなく大きくもないが、洋装の白いぬり壁が、異国の家のように個性的で、理央は気に入っていた。
「可愛い家だね。理央のイメージにピッタリだよ」
「ありがとう。でも、何だか恥ずかしい。悠斗の家に比べると、うちなんか小さくて質素でしょ?」
「そんな事関係ないよ。家族に、ちゃんと愛されてる家だって伝わるよ?」
「そうかな…」
「亡くなったお父さんも、この家で暮らしていたの?」
「うん。元々は父が若い頃、一人で住んでいた家みたい。母と結婚して私が産まれてからは、家族3人で暮らしていたの」
「じゃあ、理央や涼子さんは、この家を大切にしていたお父さんに、今も見守られているんだね…」
悠斗が、自分の家をこんなふうに言ってくれるとは思わなくて、理央の胸は思わず熱くなった。
そっか…。
この家には、父の想いがこめられている。
今も、私達を守ってくれている。
そんなふうに考えると、今まで過ごしたこの家への愛着が、途端に増してくる気がした。
父は、誰にでも親切で、思いやりに溢れた人だったと聞いている。
私が今まで、母と平穏に暮らしてこれたのは、そんな父のおかげなのかもしれない。と、理央は思った。