完璧御曹司の溺愛



「でも夕食は、いつも理央に任せっきりだし、今夜くらい私が…」と、涼子は躊躇っている。


「いいの、いいの!それよりお母さん、早く出なきゃ。せっかくの電話が切れちゃうよ?」


 理央はせかすように、涼子の背中を押した


「そ、そうね。じゃあ、少しの間だけ、お願いね」


 涼子は携帯を手に、やっとキッチンを出て行った。


 理央はホッと息をつき、いつも通りの手順でカレーを作り始める。


 その最中、悠斗の様子が気になった理央は、キッチンカウンターの隙間から、悠斗が座っていたソファを眺めた。


 でも、そこに悠斗の姿はない。


 どこへ行ったんだろうと、周りに目を凝らすと、リビングと続きになっている畳の部屋で、座っている悠斗の後ろ姿を見つけた。


 悠斗の前には、理央の父、桜井芳樹の仏壇があり、悠斗は静かに手を合わせている。


「悠斗……」


 理央の父を大切に思ってくれている悠斗の姿に、理央の胸は熱くなる。


 これから先は私も、悠斗と悠斗の家族を大切に守っていきたい。




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