完璧御曹司の溺愛



_______

_____



「本当にいいの?」


「うん。何もないけど入って?」


 理央に促され、悠斗は少し躊躇するように、理央の部屋へと足を踏み入れた。


 私一人だと、ちょうどいい大きさの部屋が、背の高い悠斗が入ると少しだけ狭くなったように感じて、何だかいつもの部屋じゃないみたい…と、理央は思う。


「へぇ。理央の部屋、可愛いね」


 あまり、流行り物に興味のない理央の部屋は、年頃の女の子にしては殺風景だった。


 それでも悠斗は嬉しそうに、シンプルを統一している小さな部屋を見渡した。


「悠斗、とりあえず座って?」


 悠斗は、理央のベッドの前に座った。



 理央は、家の前で悠斗を引きとめた時の話の続きがしたいと言って、悠斗を自室へ連れてきた。


 今から悠斗に告白をする。


 そう考えると、理央は悠斗の顔を真正面から見られそうになかったので、おずおずと悠斗の隣に座った。


「あ、あのね…、さっき言いかけた事なんだけど…」


「うん…」


 悠斗は隣から、少し不思議そうに理央の顔をジッと伺う。


 ど、どうしよう…

 ち、近い…


 悠斗の国宝級に綺麗な顔が、すぐ間近に迫っていて、悠斗を意識しだした理央の胸は、またしても詰まってきてしまう。


 私、このままじゃ永遠に、悠斗に告白出来ないかも知れないと、理央は徐々に焦り始める。


 悠斗が感動してくれるくらい、熱い心の内を届けたいのに、緊張から自分の心臓の音が大きく鳴り響いていて、隣の悠斗にも、聞こえてしまいそうな程だ。

 
 あぁ、早くしなきゃ、いずれ悠斗の迎えの車がやって来てしまうのに。


「えぇっと…」


「今日は理央、何か変だよ?熱でもあるのかな?」


 と、悠斗が理央の額に触れようと無意識に手を伸ばしてくる。

 
 今、そんな事をされると、いよいよ一言も喋れなくなってしまうのに…!


「あっ!だっ、大丈夫だからっ!そのっ、ちょっとだけ待って?」


「う、うん…」


 理央の声を聞いて、悠斗が一瞬怯んだ。


 そんな悠斗の反応にすら気付かない理央は、悠斗に背をむけて、深呼吸をした。



< 76 / 221 >

この作品をシェア

pagetop