完璧御曹司の溺愛
理央は悠斗の長い首筋を視界に捉えていた。
制服のシャツの隙間から覗く白い鎖骨が、男らしくて綺麗だなと、思った……。
「理央……」
悠斗は熱く濡れた声で理央の名を呼ぶ。
「俺も、理央を幸せにするよ……。この先、何があっても理央を守ってみせるから……」
理央は、悠斗の美しさに陶酔したようにぼんやりと、悠斗の声を聞いた。
目前に迫るのは、悠斗の薄い唇。
その隙間に、今から自分の唇が触れるのだと思うと、嬉しさと同時に身体が熱く疼いた。
「このまま俺に、理央をちょうだい…」
悠斗……私も………
悠斗が……欲しい…よ……
その時突然、ドアからコンコンと、ノック音が響いた。
「理央、悠斗君、お迎えの方がいらしたわよ?」
涼子の声だった。
理央の身体はビクンとはねて、閉じかけていた目を見開いた。
そして、涼子の声に答える為、反射的に悠斗から顔を反らそうとする。
けれどすぐに、悠斗に片手で顎を捕まれ、強制的に顔を戻された。
そのまま、悠斗が自分の唇を理央の唇に強く押し当ててくる。
「んっ………」
そこから、ジワリジワリと唇が溶けるような、甘い熱が広がった。
ゆ、悠斗…っ
目を開いたままの理央は、悠斗の強引な唇に身体を固くした。
悠斗は眉を寄せながら目を閉じ、少し苦しげに理央の唇を味わう___
「ん…」
そしてすぐに離されると、激しい熱を秘めた眼差しを理央に向けてくる。
食べられてしまいそうな、その鋭い視線を身に受けて、理央の身体はゾクゾクと官能的に震えた。
「理央?悠斗君?」
なかなか声が返らずに心配そうな涼子の声を、ドアの向こう側に聞く。
でも理央は、あまりに突然の悠斗の口づけに声を失っていた。
悠斗がすぐに反応し「分かりました。今、行きます」といつもと変わらない口調で答えた。
涼子のスリッパの音が耳から遠ざかっていく。
ぼぅっとして動けずにいる理央を見て、悠斗がクスリ笑う。
「理央?」
ハッと我に返る理央に「大丈夫?」と声がかかる。
「ゆっ、悠斗、ご、強引だよ……」
「強引なのは嫌だった?」
「い、嫌なわけじゃ…」
むしろ、嬉しい。
理央の心臓は、その喜びを表すかのように跳ね上がり続けている。
理央にとって、これがファーストキスだ。
その相手が悠斗なのは、この上ない喜びに違いない。
だけど優しい悠斗に、こんなふうに唇を奪わるとは思っていなくて、理央は魂を抜かれたようになってしまった。
「ごめん。驚かせた…」と悠斗は、理央の髪を優しく指ですきながら、理央の顔を覗き込む。
「仕切り直そうか?」
改めてそう言われると、理央は素直になれない。
「い、いい。もう、迎えが来てるから…!」
羞恥からプイっと悠斗にそっぽを向けば、悠斗は優しく理央の頭を引き寄せる。
「素直じゃない理央も、可愛いな…」
そして、身構える間もなく、二度目のキスが注がれていた。
「…っ」
そのキスは、理央の唇を優しくなぞる、理央を慈しむような甘いもの。
一度目のキスよりも、悠斗の唇は柔らかくて熱かった。
その熱が理央の全身に伝わって、身体がトロトロに溶かされそう……。
「んっ……」
角度を変え、何度も触れて離れてを繰り返すキスは、この狭い空間に、甘いリップ音を残していく。
どちらともなく視線を絡め、指には指を絡めあった__
「…理央……」
熱い息を吐きながら、掠れたような声で、悠斗は理央を求めるように名を呼んだ。
その切ない囁きに、理央の身体は震える。
悠斗が理央に与える甘い疼き。
その情熱を身体に宿し、理央は悠斗のキスに必死に応えた。
そしてつかの間、二人は、覚えたばかりの甘い熱を求め続けた_____