完璧御曹司の溺愛
嫉妬
「お迎えにあがりました。若様」
理央の部屋の前に、スーツ姿の初老の男性が立っている。
悠斗と共に部屋を出た理央は、その男性の姿にギョッと目を丸くした。
「いつからそこにいたの?」
隣の悠斗から、ため息混じりの呆れた声が漏れた。
「5分程前でしょうか?若様がなかなか玄関から出て来られなかったので、こちらで待機しておりました」
理央はヒヤリとした。
悠斗と口づけを交わしあっていた間、この人はこの薄い扉の向こう側でジッと悠斗を待っていたんだ。
な、何か聞かれていないだろうか…
いや、何も大きな音を立てるような事はしてないけど……
聞かれていたとしたら、キスの合間に漏れた声とか……?
先程まで、悠斗と交わしていた甘い甘い口づけ。
それを思い出し、身体が再加熱する。
私ったら、何を思い出してるの、こんな時にっ___
「それにしても、さすがでございますね、若様」
「なっ!何がですかっ!?」
男性のその言葉に、理央は身を乗り出して叫んでしまった。
「おや?」と、男性が理央の方へ顔を向ける。
そして、理央を認識すると、白ヒゲを蓄えた頬を柔らかく緩めた。
その表情が、全ての事情を見通すような笑みに見えて、理央は更に焦ってしまう。
「な、何もないんですよっ!ほ、本当ですっ!私達、健全なんです!!」