未来の約束と過去の願い
スマホを覗いて、電車の時間を一緒に調べる。
「今が15時すぎだから…。この15時32分の電車はどうだ?」
俺はそう言って、時間表が写った宗弥のスマホの画面を指差す。
「そうだな。それなら急がなくても間に合いそうだし。」
そう話していると、スマホにラインの通知が表示された。
「あ、さくちゃんからだ。」
通知を見て、あからさまに口角緩んでいる宗弥。よほど嬉しいのだろう。
「…良かったな。」
宗弥は何もなかったように時間表をぱっと閉じて、すぐにラインを開く。
そして口角緩んだまま、返信の文字を打っていた。
"さくちゃん"とは、宗弥の彼女だ。そして俺のクラスメイトでもある。
さくちゃん…七瀬 咲良。可愛らしい名前の子だが、生徒会長としてみんなを引っ張っている。
持ち前の明るさと観察力を活かして、様々な場面で活躍している。
周りからの信頼も厚く、クラスメイトは勿論、他クラスからも人気が高い。
その性格も相俟って、宗弥とは相性がいいんだろう。
恋愛、恋人、青春…。
俺には無縁なものだ。
羨ましいかと問われれば、全否定は出来ないが今の生活に満足している。
学校に通って、友達や先生、家族に恵まれて、休日には本屋に行って、連休には遠い場所に行く。
なんて幸せな生活だろうと自分でも思う。
勿論恋人と過ごす学生生活も素敵なものだと思うが、俺の生活だって幸せな生活だ。
「今日が昨日になって、明日が今日に変わって」という言葉を聞いたことがあるが、それは当たり前であるが素晴らしいことだ。
俺にだって、明日なんて来なければいいのにと思うことも良くある。
だが、明日は必然的にやって来るし、それはどう足掻いても逃れられないもの。
それでも仕方なく適当に過ごしていれば、逆も然り時間は止まらずに次の日はやって来るのだ。
そんな風にして毎日を繰り返して、長い年を生きてきた。
その中で、後悔してきたことも多々ある。
勿論、後悔したことがない人のほうが稀だと思うが、それでもずっと心に残っている。
どうにかして過去に戻ることが出来たら、今の自分があの頃に戻れたら。
そうすれば、昔の俺が救われて、今の俺が少しは変われるだろうに。
何度もそう思った。
その反面、過去に戻ることが怖いとも思った。
戻って過去を変えれば、今の俺は居ないかもしれない。
ああいった過去があったからこそ、今の俺は存在しているのかもしれない。
では、もし逆に未来に行くことが出来たとしたら…?
見てみたい気持ちもあるが、見たくないほうが勝る。
_…そんな哲学的なことをずっと考えていると、いつの間にか時間は過ぎているし、何より疲れる。
それでも考え続けてしまうのは、きっと俺の悪いところなのだろう。
「…おい!」
「なんだよ。」
「なんで無視するんだよ!ずっと話しかけてるのにさ!」
「…聞いてなかった。桜良ちゃんには返信できたのか?」
「とっくに出来てるよ。」
"とっくに出来てるよ"という宗弥の言葉は、『こんなに長い間、お前は考え込んで周りが見えていませんでしたよ。』という俺に対しての皮肉なのだろう。
「…ごめん。」
「いいって。それより駅はここを右でいいんだよな?」
「あぁ、合ってるよ。」
「よし。」
俺たちは駅に向かう道のりを進みながら、また他愛もない会話をし始めた。
「今が15時すぎだから…。この15時32分の電車はどうだ?」
俺はそう言って、時間表が写った宗弥のスマホの画面を指差す。
「そうだな。それなら急がなくても間に合いそうだし。」
そう話していると、スマホにラインの通知が表示された。
「あ、さくちゃんからだ。」
通知を見て、あからさまに口角緩んでいる宗弥。よほど嬉しいのだろう。
「…良かったな。」
宗弥は何もなかったように時間表をぱっと閉じて、すぐにラインを開く。
そして口角緩んだまま、返信の文字を打っていた。
"さくちゃん"とは、宗弥の彼女だ。そして俺のクラスメイトでもある。
さくちゃん…七瀬 咲良。可愛らしい名前の子だが、生徒会長としてみんなを引っ張っている。
持ち前の明るさと観察力を活かして、様々な場面で活躍している。
周りからの信頼も厚く、クラスメイトは勿論、他クラスからも人気が高い。
その性格も相俟って、宗弥とは相性がいいんだろう。
恋愛、恋人、青春…。
俺には無縁なものだ。
羨ましいかと問われれば、全否定は出来ないが今の生活に満足している。
学校に通って、友達や先生、家族に恵まれて、休日には本屋に行って、連休には遠い場所に行く。
なんて幸せな生活だろうと自分でも思う。
勿論恋人と過ごす学生生活も素敵なものだと思うが、俺の生活だって幸せな生活だ。
「今日が昨日になって、明日が今日に変わって」という言葉を聞いたことがあるが、それは当たり前であるが素晴らしいことだ。
俺にだって、明日なんて来なければいいのにと思うことも良くある。
だが、明日は必然的にやって来るし、それはどう足掻いても逃れられないもの。
それでも仕方なく適当に過ごしていれば、逆も然り時間は止まらずに次の日はやって来るのだ。
そんな風にして毎日を繰り返して、長い年を生きてきた。
その中で、後悔してきたことも多々ある。
勿論、後悔したことがない人のほうが稀だと思うが、それでもずっと心に残っている。
どうにかして過去に戻ることが出来たら、今の自分があの頃に戻れたら。
そうすれば、昔の俺が救われて、今の俺が少しは変われるだろうに。
何度もそう思った。
その反面、過去に戻ることが怖いとも思った。
戻って過去を変えれば、今の俺は居ないかもしれない。
ああいった過去があったからこそ、今の俺は存在しているのかもしれない。
では、もし逆に未来に行くことが出来たとしたら…?
見てみたい気持ちもあるが、見たくないほうが勝る。
_…そんな哲学的なことをずっと考えていると、いつの間にか時間は過ぎているし、何より疲れる。
それでも考え続けてしまうのは、きっと俺の悪いところなのだろう。
「…おい!」
「なんだよ。」
「なんで無視するんだよ!ずっと話しかけてるのにさ!」
「…聞いてなかった。桜良ちゃんには返信できたのか?」
「とっくに出来てるよ。」
"とっくに出来てるよ"という宗弥の言葉は、『こんなに長い間、お前は考え込んで周りが見えていませんでしたよ。』という俺に対しての皮肉なのだろう。
「…ごめん。」
「いいって。それより駅はここを右でいいんだよな?」
「あぁ、合ってるよ。」
「よし。」
俺たちは駅に向かう道のりを進みながら、また他愛もない会話をし始めた。