あなたを忘れて生きていた
5.思い出②
幼いアルベルトは別荘に行くと、毎日のようにそこから抜け出して森に行った。フィリアは毎日は来なかったが、3日に一度ぐらいは顔を出して、アルベルトと話をした。当時のフィリアは、アルベルトが貴族の子供だと知らず――とはいえ、綺麗な服を着ているとは思っていたので金持ちの子供だとは思っていたが――生意気な口もきいていた。そして、アルベルトはそれを許した。
森の入口を入って、すぐの草原。そこの傍には枯れた木が横たわっており、彼らは並んで木の上に腰を下ろした。時々フィリアは村で焼いたと言う少し固いパンを持って来た。そして、アルベルトは時々、食べたふりをしてチェストにそっと閉まっていたクッキーを持参した。
フィリアは彼が持ってきてくれるクッキーが好きだった。その日も、アルベルトはクッキーを4枚持っていて、2枚ずつ食べた。上質な菓子をサクサクと音を立てて食べていると、突然アルベルトが真剣な顔をしてフィリアに言った。
「ねぇ、僕、フィリアをお嫁さんにしたいんだけど」
「えっ? 何? なんて言ったの!?」
驚きの声をあげるフィリア。アルベルトはクッキーを手に持ったまま、もじもじしながら同じことをもう一度言う。
「お嫁さん? でも、わたしまだお嫁さんにはなれないわ。お母さんが言っていたの。まだ早いって」
「まだ早い? もうお嫁さんの話をお家でしているの?」
「この前、村一番の綺麗なおねえさんが結婚をして、隣町に行ったのよ。本当に綺麗だったわ! それで、わたしもあんな風に綺麗なお嫁さんになれるのかなってお母さんと話したの」
そう言ってフィリアが笑ってクッキーを食べると、アルベルトは少し怒ったように言う。
「村一番? フィリアが一番に決まってるだろう!?」
「ええっ? そ、そんなことはないよ」
「ある。だって、この前村に連れて行ってくれた時さ、村のどこを見てもフィリアより可愛い女の子はいなかった」
先日、彼が村を見たいと我儘を言ったので、フィリアは彼を村に連れて行って、皆に内緒で村の様子を見せていた。とはいえ、フィリアの家の周辺や、子供たちが遊ぶ場所、それから、大人たちが働いている様子を少し陰から見ただけだ。なのに、フィリアが一番なんて、子供ならではの発想だ。自分たちは、確かに子供だけど……そう思いつつも、彼女は溜まらず噴き出した。
森の入口を入って、すぐの草原。そこの傍には枯れた木が横たわっており、彼らは並んで木の上に腰を下ろした。時々フィリアは村で焼いたと言う少し固いパンを持って来た。そして、アルベルトは時々、食べたふりをしてチェストにそっと閉まっていたクッキーを持参した。
フィリアは彼が持ってきてくれるクッキーが好きだった。その日も、アルベルトはクッキーを4枚持っていて、2枚ずつ食べた。上質な菓子をサクサクと音を立てて食べていると、突然アルベルトが真剣な顔をしてフィリアに言った。
「ねぇ、僕、フィリアをお嫁さんにしたいんだけど」
「えっ? 何? なんて言ったの!?」
驚きの声をあげるフィリア。アルベルトはクッキーを手に持ったまま、もじもじしながら同じことをもう一度言う。
「お嫁さん? でも、わたしまだお嫁さんにはなれないわ。お母さんが言っていたの。まだ早いって」
「まだ早い? もうお嫁さんの話をお家でしているの?」
「この前、村一番の綺麗なおねえさんが結婚をして、隣町に行ったのよ。本当に綺麗だったわ! それで、わたしもあんな風に綺麗なお嫁さんになれるのかなってお母さんと話したの」
そう言ってフィリアが笑ってクッキーを食べると、アルベルトは少し怒ったように言う。
「村一番? フィリアが一番に決まってるだろう!?」
「ええっ? そ、そんなことはないよ」
「ある。だって、この前村に連れて行ってくれた時さ、村のどこを見てもフィリアより可愛い女の子はいなかった」
先日、彼が村を見たいと我儘を言ったので、フィリアは彼を村に連れて行って、皆に内緒で村の様子を見せていた。とはいえ、フィリアの家の周辺や、子供たちが遊ぶ場所、それから、大人たちが働いている様子を少し陰から見ただけだ。なのに、フィリアが一番なんて、子供ならではの発想だ。自分たちは、確かに子供だけど……そう思いつつも、彼女は溜まらず噴き出した。