あなたを忘れて生きていた
6.炎の記憶
数日後。フィリアはそれなりにランマース家に慣れて、そうアンブロス子爵邸と変わりもなく仕事をこなしていた。ランマース家はアンブロス家に比べれば邸宅も小さく、使用人もそう多くない。
(でも……突然アンブロス子爵邸からいなくなって……)
アデルバートはどうしただろうか。あれから彼からのプレゼントはやって来ない。アンブロス家にプレセントを贈ったのも、カタリナがいたから許されていたのだろうか。
(プレゼントが欲しいわけではないけれど)
なんとなく。そうだ。なんとなく、彼との繋がりが切れたことが寂しい。とはいえ、自分は小間使いで、主人の言葉が絶対だ。ヴィリーに住み込みを命じられたのも、アンブロス子爵からだと言われたし、ここで当分働くしかない。
けれど、やはりどこか寂しい。きっと、自分はアデルバートのことが少しだけ気になったのだ。いや、プレゼントをもらいっぱなしなのも申し訳ないし……とはいえ、自分には何も彼に出来ない。そう。自分が彼にしてあげられることと言えば……。
「あれ? わたし……」
ぽつりと呟く。
遠い昔、何か。同じように思ったことがあった気がする。わたしは、彼に何もしてあげられない。自分が出来ることと言えば……。
「フィリア、ちょっと」
物思いはそこで終わった。屋敷の外で箒を持って木の葉を集めているフィリアに、侍女長が声をかけたからだ。彼女は木の枝が大量に乗っている台車を押して来て、ふう、ふう、と息を荒くついた。
「ごめんなさいね。こんなこと、本当は男の使用人に頼みたいんだけど、ちょっと手が足りなくて。ここにある木材を、お屋敷の裏に持って行ってくれないかしら。火を燃やしているから、そこにこれを投げ入れて焼いて欲しいのよ。あなたが今集めている葉っぱも、一緒に持って行って焼いてしまっていいわ」
「……わかりました」
火を燃やしているから投げ入れる。それを想像してぞくりと背筋が冷たくなった気がしたが、フィリアは引き受けて台車を動かした。言われた通り屋敷の裏に行くと、ぽっかりと開いた場所に炎があがっている。そこに木を投げいれている使用人が1人いたが、彼は「ああ、それも焼いてくれ」と言っては、彼が持っている台車を持ってどこかに行ってしまった。人手が足りないのは事実なのだろう。
(でも……突然アンブロス子爵邸からいなくなって……)
アデルバートはどうしただろうか。あれから彼からのプレゼントはやって来ない。アンブロス家にプレセントを贈ったのも、カタリナがいたから許されていたのだろうか。
(プレゼントが欲しいわけではないけれど)
なんとなく。そうだ。なんとなく、彼との繋がりが切れたことが寂しい。とはいえ、自分は小間使いで、主人の言葉が絶対だ。ヴィリーに住み込みを命じられたのも、アンブロス子爵からだと言われたし、ここで当分働くしかない。
けれど、やはりどこか寂しい。きっと、自分はアデルバートのことが少しだけ気になったのだ。いや、プレゼントをもらいっぱなしなのも申し訳ないし……とはいえ、自分には何も彼に出来ない。そう。自分が彼にしてあげられることと言えば……。
「あれ? わたし……」
ぽつりと呟く。
遠い昔、何か。同じように思ったことがあった気がする。わたしは、彼に何もしてあげられない。自分が出来ることと言えば……。
「フィリア、ちょっと」
物思いはそこで終わった。屋敷の外で箒を持って木の葉を集めているフィリアに、侍女長が声をかけたからだ。彼女は木の枝が大量に乗っている台車を押して来て、ふう、ふう、と息を荒くついた。
「ごめんなさいね。こんなこと、本当は男の使用人に頼みたいんだけど、ちょっと手が足りなくて。ここにある木材を、お屋敷の裏に持って行ってくれないかしら。火を燃やしているから、そこにこれを投げ入れて焼いて欲しいのよ。あなたが今集めている葉っぱも、一緒に持って行って焼いてしまっていいわ」
「……わかりました」
火を燃やしているから投げ入れる。それを想像してぞくりと背筋が冷たくなった気がしたが、フィリアは引き受けて台車を動かした。言われた通り屋敷の裏に行くと、ぽっかりと開いた場所に炎があがっている。そこに木を投げいれている使用人が1人いたが、彼は「ああ、それも焼いてくれ」と言っては、彼が持っている台車を持ってどこかに行ってしまった。人手が足りないのは事実なのだろう。