No YOU No Life
「夏でも夜の8時になるとさすがに暗いな」

適当に相槌を打ちながら、どうすれば真斗は本音を吐き出してくれるだろうかと思考をめぐらせていると、少しあった段差につんのめって転びそうになる。

「おっと、あぶね。ちゃんと足元見なよ」

転ぶ寸前、真斗はさっと腕を出して、私の体を支えてくれた。

「ありがとう」

お礼を言って私は立ち止まった。

彼は私が止まったことに気づかず、3歩ほど歩いてから振り返った。

「私さ、真斗みたいに上手じゃないんだ。頭だって回らないし、すぐ失敗するし」

真斗の喉がゴクリと上下したのが見えた。

「だからストレートに言う。
真斗、本当は傷ついてるの、分かってるよ
前みたいに、体壊して欲しくないから、もうあんなボロボロの真斗見たくないから!
私に話してよ…私たち小さい頃からずっと一緒にいるじゃん、私ばっか真斗に頼ってばっかでさ。真斗はまったく私に頼ってくれないじゃん!」

ほぼ叫んでいるようなものだったと思う。

言っている途中に、過去のことを思い出して、視界が涙でぼやけた。喉がきゅっと締め付けられた。
それを見られたくなくて、下を向いた。

ゆっくりと1歩ずつ、真斗が近づいてくるのが気配でわかった。

「ちょっとブランコ乗らない?」

彼が放ったのはそんな突拍子もない、子供じみた言葉だった。
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