No YOU No Life
文化祭前日。今日は授業なしで一日中クラスのみんなで準備ができる日だ。うちのクラスの出し物は、カフェに決まった。

文化祭実行委員で席を外しているうちにもうだいぶカフェは出来上がっていた。

チェックのテーブルクロスに、カフェメニューの書かれた看板、黒板にも可愛らしいイラストが描かれている。

感動して固まっていると、クラスをまとめてくれていた学級委員の佐野が駆け寄ってくる。

メガネのレンズ越しに見える目はいつも凛としていて頼りがいがある。

「瀬々木も文化祭実行委員の仕事の手が空いたら、クラスの方も手伝ってくれないか?」

「あうん!もちろん!
むしろ、クラスの方任せちゃってごめんね
当日私はそんな仕事ないからほぼずっとクラスいれると思う」

「その方がきっと冠城も喜ぶよ」

なぜ真斗の名前が出たのかよく分からなかったが、私が返事をする前に忙しい佐野は呼ばれてしまった。

「ひーな!」

この声は。

「琴葉!」

「ねね、これ着てみて!」

そう言う琴葉が持っていたのは細かいレースがたくさんあしらわれたメイド服だった。
とても文化祭レベルには見えない。

「つくったの!?」

琴葉は満足気に頷いて、私を空き教室に押し込んだ。

「みんなに言ったら怒られそうだけど、私陽菜にメイド服着せたくて、クラスの出し物カフェにしたんだよー」

そんなふうに言われるとプレッシャーだ。

「あんまり期待しないでね…?」

メイド服はふわふわのパフスリーブになっていて、袖を通すと心が踊る。

着替えたよ、と言い終わる前に琴葉はいつの間にかこちらを向いていて目を輝かせていた。

「陽菜!!!可愛い!可愛すぎる!私天才かも!」

琴葉に手を引かれ、教室に入るとクラスメイトの視線が集中しているのを感じ、顔が熱くなった。
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