No YOU No Life
その後も私はわらわらと女子たちに取り囲まれ、可愛いだのお人形さんみたいだの、さんざんおもちゃにされて他クラスへも連れ回され、下校時間の頃にはヘトヘトになっていた。

脱けがらになった衣装を見ながらため息を着く。少し脱ぐのが難しく苦戦したが、それにしてもよく出来ている。さすが琴葉。

へたりこんでいると急に首筋にヒヤリとした感触があり、驚いて悲鳴をあげてしまい飛び退く。

「あはは、そんな驚く?ごめんごめん」

振り返ればペットボトルの水を2本持った真斗が立っていて、ちっとも反省する気のない顔をしていた。

私は反抗心から、聞こえるか聞こえないかくらいの声量でありがとうと言いながら水を受け取る。真斗はそんな私の様子を見て吹き出す。

「子どもか」

「そっちもね」

水が喉を通り抜けていく感覚。
疲れも一緒に流されていくような気がした。
あ、そういえば。ちょっと引っかかったことをきいてみようか。

「メイド服、変だった?」

「え?」

真斗の目が大きく見開かれる。予測していなかったようだ。

「目逸らしたし、どう?ってきかれてもなんか曖昧な返事しかしなかったじゃん」

「いや・・・」

真斗は少し困ったような顔をしてから下げていた視線を私の目に合わせた。

「すごい似合ってた」

今度はこちらが面食らってしまい、視線を逸らす。

「なんか、みんなに反応求められてるみたいで恥ずくてさ」

なんだ。そうだったのか。

「私なんてあの後、」

私がその後クラスの女子に散々連れ回された話をすると、真斗は目を細めた。
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