No YOU No Life

その瞬間、瀬賀那津がさっとしゃがんだ。ふわりと彼の表情が緩み、緊張感が消えた。

「嘘だよ。こっちこそごめん。」

あの状況で声をかけたらどうなるか、少しはわかっていたらしい。

「てか、陽菜のクラスってメイド喫茶なの？その衣装ってもしかして手作り？」

「あ、うん。すごく得意な子がいて…すごいよね」

「それもそうだし、陽菜にめっちゃ似合ってて可愛い」

あまりに直球で言われたので無防備だった私は面食らう。

「えぇ…」

「何その反応」

いつかに見た甘やかな目で、上目遣いでこちらをまっすぐ見るものだから耐えられなくなって目を逸らす。

「瀬賀はどこ行きたい？」

「うーん…陽菜が行きたい場所かな」

「なんでそうゆうこと言うわけ」

こちらを見てくる瀬賀の目を隠そうと手を伸ばすと、柔らかな栗色の髪に目が引き寄せられる。