No YOU No Life
「せ、瀬賀どこにいるの?!」

「じっとしてれば目が慣れる。あんまり動き回ると怪我するから。」

私は小さい頃から暗い所が苦手だ。
心臓がバクバクして、どうしようもなく不安になる。
冷や汗がツーっと胸の辺りを流れていく。

とにかく、瀬賀のそばに行きたい。
何も見えないけど手探りで少しずつ進んでいくと、突然なにかにつま先がぶつかり、つんのめった。

「痛ったー、」

咄嗟に地面に着いた掌がじんじんする。
少し擦ったかもしれない。

「大丈夫か?」

声がすごく近くからきこえて、手を伸ばすと瀬賀らしきものに触れた。

「これ瀬賀?」

応えるようにするりと手を握られた。
暖かった。



「暗い所苦手なの?」

「うん。この歳になっても怖いとか、だいぶ恥ずかしいけど。」

「そう?誰にでも苦手なことくらいあるでしょ」

少し意外だった。瀬賀なら馬鹿にしてきそうだと思ったのに。



そうこうしているうちに少しずつ目が慣れてきた。

「もう平気?」

不思議ともう怖くなかった。
私が小さく頷くと、瀬賀はぱっと手を離した。

私が怖がっているから手を握っていてくれたのか。

自由になった手はいつもより軽く感じた。





< 28 / 36 >

この作品をシェア

pagetop