No YOU No Life
「さて、とりあえず誰かに連絡してみるか」

扉を揺さぶってみたがビクともしない。鍵がかけられてしまったようだ。

「あー私スマホ教室だ…」

「じゃあ俺が代わりにかけるよ」

とはいえ、瀬賀は私の友達のLINEを持っていないわけだし、となると。

「誰か電話番号覚えてるやついる?」

そう。私が電話番号を覚えているのは。

「真斗の電話番号しか分かんない」

最悪だ。いちばん知られたくない、見られたくない真斗に助けられるなんて。

私が変な顔をしているのが見えたのか、瀬賀はほいっと自分のスマホをこちらに差し出してきた。

「こんな湿気てる場所にいつまでもいるのは嫌じゃん?陽菜が心の準備出来たらかけなよ」

スマホがこんなに重たく感じたことはあったか。
元はと言えば私のせいで瀬賀もここに閉じ込められることになってしまった訳だし、いつまでもここにいさせるわけにはいかない。
短く息を吐いて、私は真斗に電話をかけた。

「…陽菜?どうしたの?」

聞き慣れた声に、一気に安心する。

事情を話すと、真斗は私の心配をした。
真斗は私が暗い所が苦手で泣いたりパニックになったりする姿を小さい頃散々見ていたからだ。

大丈夫。落ち着いてるよ。
そう伝えると、すぐに向かうと言ってくれた。


5分もしないうちに外でガチャっと音がして明るくなった。

「ここで2人で何をしていたの」

眼鏡をかけた怖そうな女性教師が睨みながらきいてくる。

たしかに倉庫の中に入ったのは悪いかもしれないけどこちらは閉じ込められた被害者なんだよなあと思っていると、瀬賀が口を開いた。

「ちょっと探し物をしていて…」

「探し物?君、桜丘の生徒じゃないわよね」

そうだ。うちの学校の生徒はクラスTシャツや制服を着ている。瀬賀は私服だった。

「彼はこの間バスケの試合でうちに来てたんです。もしかして道具に紛れてしまったんじゃないかって探していて、彼女はそれを手伝っていたんだと思います。」

助け舟を出してくれたのは、眼鏡の女性教師の後ろにいた真斗だった。
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