No YOU No Life
その日の放課後、私は部活で遅くなるという琴葉に別れを告げ、一人で帰っていた。

するとその途中、いたのだ。彼が。

スマホを見るわけでもなくただぼーっとたっていた彼は、私の視線に割とすぐに気がついた。

「あ、今朝の痴漢ガール」

「やめてよ人聞き悪い。私は被害者側なんだから」

そういうと彼は今朝したみたいにくしゃっと笑った。

思わず見とれてしまうが、痴漢ガール呼ばわりされたことを思い出し、

「私には名前あるんだけど」

するとすぐに
「和流 陽菜、でしょ?」

と答えが返ってきた。

驚いて何も言えずにこくんと頷く。

それを察したのか、

「和流なんてめずらしいじゃん。だからおぼえてた。で、陽菜はいつもこの時間に下校してるの?」

いきなり陽菜と言われ面食らったが、私は平静を装って首を振る。

「ううん、私文化祭の実行委員でさ、あと1ヶ月くらいで桜丘祭っていううちの学校の文化祭だから、1ヶ月だけね」

答えると瀬賀那津はにやりといたずらっぽく笑い、口を開いた。

「んじゃ、俺毎日陽菜に会えるんだ」

……な、なにそれ…、まるで、わたしにあいたいみたいに…この前初めてあった私に…

「え、は、…」

なにか言い返したいのに上手く言葉が出てこない。

彼はクスリと笑って視線を逸らすと、

「俺、バスケ部なんだ。だからいつもこの時間。ねえ、顔真っ赤だけど大丈夫?」

口に出して指摘され、私の顔がどんどん熱くなっていく。

「え、そうだ。ねえ今度さ、バスケの試合あるんだけど見にこない?他校の人も呼んでもりあげてくれー、お前人脈広いんだろーって圧掛けられててさ」

ようやく話題が移ったことに私は少し安堵する。

「あ、でも陽菜って桜丘の人だっけ。
次の試合桜丘となんだよね。」

バスケの試合か。
そういえばバスケといえば。

「冠城 真斗(かぶらぎ まなと)って知ってる?」

すると予想外にはやく返事が返ってきた。

「あー、桜丘のエースの人だろ?
たしか県選抜にも選ばれてた気がする
そいつがどうかした?」

「真斗は私の幼馴染なんだよね。
家族ぐるみで仲良くしてて、バスケの試合の時は、私の家族と真斗の家族は毎回一緒に応援しに行くんだけど…」

「だから俺のことは応援できないってこと?」

察しのいい彼の言葉にこくんと素直にうなずく。

瀬賀那津は特に気落ちする様子もなくこう続けた。

「まあでも会場には来てくれるんでしょ、俺のプレーしっかり見といて」
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