No YOU No Life
試合開始のホイッスルが鳴り響く。

正直バスケのルールは全く分からない。

が、真斗が上手いのは素人目にも歴然としていた。

鮮やかなドリブルで東高のマークを掻い潜り、シュート。

思わず手を叩く。

先制点でチームを勢いづける。

仲間に抱きつかれて、少し困ったようにクシャッと笑う真斗の表情が好きだ。



しかし順調だったのはここまでで。


キュッと体育館を靴が滑る音がしたかと思うと、スパッとゴールへ綺麗な弧をえがいて、
シュートが決まった。

あまりに美しいシュートに一瞬、時が止まっているように感じた。

つかの間、きゃああああー!とけたたましいほどの黄色い歓声が上がる。

目で追えば、さっきのシュートを放ったのは瀬賀那津だったらしい。

真斗がマークを始める。

ぴたっとくっついて、同じ距離感を保ちつつ、果敢にブロックを試みるが、マジシャンのように瀬賀那津はするりとくぐり抜けシュートを放つ。

真斗が悔しそうに顔をゆがめた。

…上手い。直感的にわかる。

その後も東がやや優勢のまま、前半が終わろうとしていた。

前半終了目前、真斗がブロックに成功し、ホイッスルの音と共にシュートを決めた時は、私は安堵のあまりため息をついてしまった。

東は上手い。
パスが的確で速く、最後にシュートを決める瀬賀那津がそれはもうべらぼうに上手い。

でも真斗も負けていないと思うんだ。

真斗はドリブルが速く、真斗が一旦持ったボールはもう誰も触れない。

さすが県代表。

「お昼にしよっか?」

無言で考えをめぐらせていた私に、おばさんが優しく声をかけてくれた。
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