No YOU No Life
昼食は私たちと一緒に食べると言っていたはずなのに、真斗がなかなか来ない。
「どこにいるか分かってないのかもしれないわね」
「あっじゃ私真斗探してきます!」
お腹がすいたのでなるべく早く見つけたいのだが。
階段をかけおりると、すぐに真斗の姿を見かけた。
「真斗!」
まわりがざわざわしていたので聞こえるか心配だったのだが、彼は一瞬で気づいたらしく、汗を拭いながらこちらに近づいてくる。
「おつかれ。かっこよかったよ真斗」
素直にそう告げると、真斗はありがと、と言って、くしゃりと私の頭を撫でた。
「おばさん二階にいるよ」
歩きだそうとする私の手を真斗が引いた。
「ねえ陽菜、東のエースと知り合いなの?」
東、というのは今日真斗の所属する桜丘高校バスケ部と対戦している相手チーム―東高校バスケ部のことだ。
「エースって」
「瀬賀。瀬賀那津だよ。あいつ試合始まる前にお前にアピールしただろ?」
「あーあれは」
やはり見られていたのか。恥ずかしい。
「彼氏?」
私が答える前に真斗がたたみかけてくる。
私は、真斗に掴まれていた手を半ば強引に振り払おうとした。
だけどその手は私の手首を掴んだままビクともしない。
なんなのよ
「あのね、彼氏じゃない。おばさんと同じこと言わないで」
急に掴まれていた手が自由になり、ぶらんと宙に浮いた。
元から私の肩から生えていたはずなのに、重く感じる。
歩きながら話そうよ、と目配せをして歩き出す。
「私こないだ、満員電車で痴漢されて、そのとき助けてくれたの」
私は簡潔に経緯を話した。
真斗は何も言わず押し黙ってしまった。
しばらくたっても返事がないので顔をみあげる。
「真斗…?」
真斗が少しこちらとの距離を詰める。
「俺が試合でもしスリーポイントシュート決めたらさ」
試合の度、真斗はよくこうやって賭けをしてくるので、私はご飯でも奢ってと言われるのだろうと軽く頷いた。
しかし、顔を見上げると、いつもと少し、何かが違うようで。
真斗は息を吸い込んで、吐いた。
距離が近いので、その空気が震えているのも感じて、私は息を飲んだ。
「…俺に飯おごって!」
知らぬまに息を止めていたのか、急に入ってきた酸素に思い切りむせた。
「そんなもったいぶって言わないでよ!緊張したじゃない!」
真斗はむせている私の背中を優しくさすってくれる。
たははと笑う横顔を見ながら、私は気づいてしまった。
これは嘘笑いだ。
人付き合いが上手い真斗は嘘笑いをして、その場のリズムを整えたり、雰囲気を良くしたりするのが得意だ。
大抵嘘笑いだとはバレないのだが、私には分かる。幼稚園からずっと一緒なのだから。
でもなんとなく聞いては行けないような気がして私は口をつぐんだ。
「どこにいるか分かってないのかもしれないわね」
「あっじゃ私真斗探してきます!」
お腹がすいたのでなるべく早く見つけたいのだが。
階段をかけおりると、すぐに真斗の姿を見かけた。
「真斗!」
まわりがざわざわしていたので聞こえるか心配だったのだが、彼は一瞬で気づいたらしく、汗を拭いながらこちらに近づいてくる。
「おつかれ。かっこよかったよ真斗」
素直にそう告げると、真斗はありがと、と言って、くしゃりと私の頭を撫でた。
「おばさん二階にいるよ」
歩きだそうとする私の手を真斗が引いた。
「ねえ陽菜、東のエースと知り合いなの?」
東、というのは今日真斗の所属する桜丘高校バスケ部と対戦している相手チーム―東高校バスケ部のことだ。
「エースって」
「瀬賀。瀬賀那津だよ。あいつ試合始まる前にお前にアピールしただろ?」
「あーあれは」
やはり見られていたのか。恥ずかしい。
「彼氏?」
私が答える前に真斗がたたみかけてくる。
私は、真斗に掴まれていた手を半ば強引に振り払おうとした。
だけどその手は私の手首を掴んだままビクともしない。
なんなのよ
「あのね、彼氏じゃない。おばさんと同じこと言わないで」
急に掴まれていた手が自由になり、ぶらんと宙に浮いた。
元から私の肩から生えていたはずなのに、重く感じる。
歩きながら話そうよ、と目配せをして歩き出す。
「私こないだ、満員電車で痴漢されて、そのとき助けてくれたの」
私は簡潔に経緯を話した。
真斗は何も言わず押し黙ってしまった。
しばらくたっても返事がないので顔をみあげる。
「真斗…?」
真斗が少しこちらとの距離を詰める。
「俺が試合でもしスリーポイントシュート決めたらさ」
試合の度、真斗はよくこうやって賭けをしてくるので、私はご飯でも奢ってと言われるのだろうと軽く頷いた。
しかし、顔を見上げると、いつもと少し、何かが違うようで。
真斗は息を吸い込んで、吐いた。
距離が近いので、その空気が震えているのも感じて、私は息を飲んだ。
「…俺に飯おごって!」
知らぬまに息を止めていたのか、急に入ってきた酸素に思い切りむせた。
「そんなもったいぶって言わないでよ!緊張したじゃない!」
真斗はむせている私の背中を優しくさすってくれる。
たははと笑う横顔を見ながら、私は気づいてしまった。
これは嘘笑いだ。
人付き合いが上手い真斗は嘘笑いをして、その場のリズムを整えたり、雰囲気を良くしたりするのが得意だ。
大抵嘘笑いだとはバレないのだが、私には分かる。幼稚園からずっと一緒なのだから。
でもなんとなく聞いては行けないような気がして私は口をつぐんだ。