生まれ変わって三度目の恋、今あなたに触れたい〜めぐり逢いて、この手が離れても何度でも〜
「遊女」牡丹の恋
「牡丹」は大輪の花。

百花の女王とも呼ばれます。

その強い見た目とはうらはらに、女は忍ぶ恋をするのでした。


遊郭で身を削るは牡丹の花。

雪深く積もる田舎の貧しい家に生まれた私は八歳の時にわずかなお金と引き換えに売られました。

ほんのわずかな潤いを与えた後、家族がどうなったかはわかりません。

幸いにも私は大見世に買い取られ、姉女郎について芸を磨きました。


数えて十七の歳。

今宵も華やかな化粧を施し、高価な衣装を纏って客を迎えておりました。

「秋月様。お会いできてうれしいです」

「おぉ、牡丹。待っておったぞ」

秋月様は馴染みであり、名のある商家の方でした。

奉公人を傍に控えてやってきます。

その男から視線を感じ、私も見返すことが増えました。

涼やかな目元に穏やかに薄い唇。

細身ながらも鍛えられていることが分かる美しい男です。

男の名は”貴臣”。

私が愛したただひとりの方でした。
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