生まれ変わって三度目の恋、今あなたに触れたい〜めぐり逢いて、この手が離れても何度でも〜
「女学生」牡丹の背く愛
一家の当主として、父親が絶対の時代。

不景気と戦争、とても生きにくい時代でございました。

女が強くたくましくなっていくのはもう少し先のこと。

私、牡丹が生きた時代は父親が絶対であり、自由恋愛なんぞ以ての外でした。

気の弱い母は影でひっそりと泣いてばかりです。

母と唄を歌ったり、お手玉をして遊んだりと幸せな時を過ごしました。

しかし十になって間もなくして、母はいなくなりました。

母のお気に入りだった牡丹の花が描かれた着物も、手鏡も、櫛も紅も全て残されていました。

母の姿だけが忽然となくなっていたのです。


「父様。母さまはどこへ行ってしまったの?」

「……もういない。帰ってこないんだよ」

「どうして? 母さまに会いたい。会いたいよ」

「お前に母はいない! お前を育てたのは私とばあやの二人だ! これを機に二度と母を求めるな!」

幼い子供であった私には母が出て行った事実を受け止められず。

父は何かに取り憑かれたかのように仕事に明け暮れていました。

家に残されたのは私とばあやの二人だけ。

ばあやはいつもいつも「かわいそうに」と涙ながらに言うのでした。

その言葉を聞くたびに何かが壊れていきます。

まるで呪いです。

母に捨てられた可哀想な子なのだと思い込むようになりました。


母がいなくなってから七年。

十七歳となった私は女学生として生きていました。

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