生まれ変わって三度目の恋、今あなたに触れたい〜めぐり逢いて、この手が離れても何度でも〜
ようやく落ち着いた頃に、私は全てを包み隠すよう艶やかに微笑んでみせます。

「ご心配をおかけしました。貴臣様」

「私の名を覚えていらっしゃったのですね」

「……貴方は秋月様のお供の方ですから」

ここで線を引かなくてはと、彼から目を反らします。

黙って距離を取ろうとしました。

しかし流そうとする指があやとりをするように絡めとられ、貴臣様の唇に引き寄せられます。

全身が熱くなり、じわりと焦がれます。

今度は掌に唇が触れました。

貴臣様は目を瞑り、震える手ですがるように手を包んできました。


警告。

これ以上はダメだと貴臣様の手を払いのけます。

貴臣様はその場で一歩下がり、頭を垂れました。

たった一歩の距離があまりにも遠く、私は立ち上がることが出来ません。


「……秋月様のことで。体調が優れず、しばらくお伺いできないと言付りました」


あぁ、そんなこと。

貴臣様が私に焦がれて会いに来るはずもない。


「では後ほど見世の者に頼み、見舞いの文を届けますね」

見てくればかり装って、内側はへし折れた花のない茎のようなもの。

花が咲けばと夢見たことも、あったようななかったような……。

儚い姿は見せても弱い姿は見せてはいけません。

恋心は淡く終わらせましょう。

必要なのは所有したいと執着していただくことなのですから。
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