生まれ変わって三度目の恋、今あなたに触れたい〜めぐり逢いて、この手が離れても何度でも〜
秋月様が客として訪れ、彼とは視線が交わっては反らすことを繰り返します。

言葉がないのが救いだったのかもしれません。


出会って一年。

桜が散ったあとの遊郭は愛想に欠けます。

秋月様にお酌をしながら笑んで語らい、夜を更かしていきます。

今までと変わらず、遊女と馴染み客、そして側に控える奉公人という図式のまま。

何も知らぬというのに焦がれるのはなぜでしょう。

恋を売る女が情けないこと……。

「牡丹、お前を愛している。妻に迎え入れたいと思うておるのだ」


――心臓が止まったのかと思いました。

その言葉をくれたのは彼ではない。

秋月様は恍惚な表情を浮かべ、たまらないと言わんばかりに私を抱きしめます。


その瞬間、喉の奥に亀裂が走りました。

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