なぜか彼氏ができない
「べつにすごくないって、全然簡単」
そう言いながら、林志朗が美味しそうな料理をどんどん作っていったから。
本人は『すごくない』なんて言ってたけど、包丁の使い方や段取りの仕方で普段から料理してる人なんだってわかった。
「俺たちの代はこんなに料理が豪華じゃなかった」
先輩社員が、目の前に並んだパエリアや鶏肉の香草焼き、それからデザートのチョコバナナなんかを見ながら言った。
ほとんど林志朗が一人で作り上げてしまった料理たちは、味だってものすごく美味しかった。

「すごいじゃん! リンリン!」
結芽ちゃんが目を輝かせた。
「リンリン?」
眉をひそめる林志朗。
「今日から君はリンリンくん。鈴の音から命名した」
「変なあだ名つけるなよ」
「いいじゃん、似合う似合う。リンリンくん」
「おい」
マイペースな結芽ちゃんに困り顔の林志朗を見て、「プッ」ってまた吹き出してしまった。
「似合うよ、リンリン! ふふっ」
鈴の音と、林志朗の〝リン〟も入ってるから呼びやすいし。
「料理も本当に超美味しいっ!」
「……」
「んー? リンリンくん、なんか顔が赤いんじゃない?」
「バーカ! そんなことねえし」

< 10 / 24 >

この作品をシェア

pagetop