なぜか彼氏ができない
「いや、マギもう帰れよ。なんか足元がおぼついてない」

〝あんたをあきらめるって決めて、酔おうとしてるのよ。こっちは〟
そんな風に思ったら、平然としてる林志朗に腹が立った。

「……ねえ、私が彼氏が欲しい理由」
「食事に遊びに旅行だろ?」
私は首を横に振る。
「言ってない。一個。一番重要なやつ」
「え……」

「セックス」

「……は!? どうしたマギ、飲み過ぎだろ!?」
「なに動揺してるのよ」
「だってマギがそんなこと言ったこと、今までないだろ」

彼はこっちがびっくりするくらい焦ってる。
たしかに、結芽ちゃんとはこの手の話もするけど、林志朗とは話したことが無い。
……だからって、中学生男子かってくらい動揺してる。

「私は友だちにも同僚にも恵まれてるよ。食事と遊びと旅行はたしかにその中の誰とだってできるよね。でも——」

たしかに自分でも酔っているとは思うけど、明確な意志を持って林志朗の目を見つめる。

「セックスはできないでしょ? だから彼氏が欲しいの。たまにはセックスだってしないと、身体だけじゃなくて心がさみしいのよ。ひとりぼっちって感じがして」
「おい、マギ……」

「〝俺でいいじゃん〟って言ってくれないの?」

「……」
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