なぜか彼氏ができない

こんなはずじゃなかった

翌朝。

「こんなはずじゃなかったのに……」

私はベッドの隅に腰掛けた林志朗の背中越しに、絶望的な言葉を聞く。
彼はきっと、私がまだ寝ていると思っている。

すぐに理解した。
〝ああ、昨夜は彼も酔っていたんだ〟って。

だからって、そんな言い方はないんじゃない?
「おはよ」
聞かなかったことにして、普通の顔であいさつする。
一瞬ビクッとする林志朗。
「おはよう……」
その顔、動揺しすぎ。後悔が滲み出すぎだから。
「会社行かなくちゃね。シャワー借りていい?」
「え、ああ、うん」
シャワーで少しだけ泣いたら、普通の顔で会社に行く。
あんな言葉を聞いてしまったら、林志朗とはこれからも今まで通りの同期の同僚でいるのが賢明だ。
実際にはこんな時でも泣き落としすらできない女なのよ、私は。


九時三十分。
林志朗とは別々に家を出て、定時ピッタリに始業する。
「ん? マギ、昨日の服のままじゃない?」
こういうの、結芽ちゃんは絶対見逃さないと思ってた。
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