なぜか彼氏ができない
「だって——」
「中村、ピザ最後の一切れ」
「お! リンリンくん、気が利くね〜」
気になることを口走った結芽ちゃんは、はちみつたっぷりのクワトロフォルマッジにご満悦だ。

「マギは、なんでそんなに彼氏欲しいの?」
林志朗に質問される。

「なんでって……」
私はワインをひと口飲む。
「食事も遊びも旅行も、彼氏がいたら気楽に誘えるでしょ?」
〝林志朗が彼氏になってくれたら合コンなんて行かないけど〟なんて言ったら、どんな顔するかな。
ワインを飲みながら想像する。

「そんなの、俺でいいじゃん」

「え……」
思わず彼の方を見る。
林志朗が急に真顔になったような気がして、少しドキッとする。
「あ、いや、友だちだって気楽に誘えばいいじゃん? 中村だって付き合い良いしさ」

……ああ、なんだ。そういう意味か。

〝同僚〟じゃなかっただけマシだと思うしかない。
私が合コンに行く理由……〝あなたをあきらめるため〟だって言ったらどうする?
「そうね、遊びも旅行も友だちと行って満足しないわけじゃないもんね」

林志朗は優しいから、泣き落としでもしたら、もしかしたら付き合ってくれるかも……なんてヤバい想像をしたりする。

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