なぜか彼氏ができない
〝ヴーッ〟と、結芽ちゃんのスマートフォンがメッセージの受信を知らせる。
「あ! 私帰る」
「え?」
「彼氏が思ったより早く出張から帰ってくる!」

そう言った結芽ちゃんは、あっという間に荷物をまとめてここまでのお会計を計算して、三分の一より少し多めのお金を置いて帰っていった。

「さすが……」
あまりの速さに林志朗は感心と呆れの交じった顔でつぶやいた。
「どうする? 二人で食事続ける?」
「……まだ料理残ってるしな」
こういう言い方、林志朗らしい。
「そういえばリンリンこそ、彼女できないの?」
ワイングラス越しに探りを入れる。
林志朗はどう考えても……少なくともビジュアル的にはモテると思われる。
〝ゴフッ〟と咽せる彼。
動揺しすぎ。
「ないない、俺は今仕事ひと筋だから」

林志朗はこれでも営業部のエース。
ちなみに私と結芽ちゃんはEC事業部で通販事業と、それに関連したマーケティング業務をしている。
アウトドア用品は昨今のアウトドアやキャンプブームで老若男女幅広い層に売れている。
私自身は一人でキャンプに行くのもやぶさかではない程度にはキャンプ好き。
まだ実行したことは無いけど。
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