なぜか彼氏ができない
「でも……私もずっと彼氏がいないけど、リンリンもずっといなくない? モテそうなのに」
「……しばらくは一人でいいんだよ、俺は」
なんとなく……本当は私の気持ちを知ってるんじゃないかっていうくらい、壁を作られてる気がするんだよね。
だから私は〝友だち〟の顔をして笑う。
「リンリン、料理だって上手だし、彼女になれる子がうらやましい」
「……」
何よその顔。
何か言いたそうな、困ったような表情。
やっぱり気づいてる? 私の気持ち。

「あの時もすごかったよね、キャンプ研修」

二年半前の会社のイベントのことを思い出す

***

二年半前。
山梨県の大きな湖の湖畔にあるキャンプ場。
私や林志朗を含むベルフォレストの新入社員たち七人は、キャンプへの知識を深めたり、自社製品の実際の使い方や使い心地を学ぶためにキャンプ研修に訪れていた。
入社して二か月ほどが経った時期だった。

「もっとグランピングみたいなやつかと思ってた〜」
不満そうにそう言ったのは、当時二十三歳になりたての結芽ちゃん。
「何言ってるのよ、それじゃ意味ないでしょ? いいからそっち、引っ張ってて」
当時からキャンプが好きだった私は、二人用のテントを組み立てながら結芽ちゃんにお説教。
この頃にはもう随分と仲が良かった。
< 6 / 24 >

この作品をシェア

pagetop