王子様だけど王子様じゃない
感染症に罹って隔離された生活を強いられた人や、震災などで住む家を無くした人。そうした人々に仮の住まいをスムーズに提供できるよう、行政ともっと協力していきましょう。簡単に言えばそういうことだ。
この災害大国では、震災の他に台風などの水害も多い。ある日突然、住む家が無くなってしまった──そんな危機に陥る人たちは後を絶たない。
うちの会社は、政府や自治体と連携してそういう困っている人たちの助けになろうとしている。しているのだが、無償提供と有償提供で揉めていて遅々として計画が進んでいないのが現状だ。
良いことのはずなのになぁ……とタブレットを抱え直しながら、副社長が一礼するのを確認した。さて次は懇談会の会場へ案内しなければ。
「副社長、懇談会の会場はこちらになります」
君嶋さんは裏に戻ってきた副社長を案内するために近寄る。片手を自然に廊下へと伸ばす彼女は、誰がどう見ても立派な秘書だ。