王子様だけど王子様じゃない
「それは……対等な契約にしたい、ということでかまわないか?」
「はい」
わかってる。一介の秘書でしかない私が、副社長を手助けするなんて……高望みだってことぐらい。
それでも。
「一方的に施されるなんてごめんです」
彼の目を見てはっきりと告げる。私にもプライドくらいはあるし、「君には苦労させない」「君は居てくれるだけでいい」なんて甘い言葉に騙されるような初心ではない。
「そうじゃないんだけどな……」
副社長は後ろ頭を掻きながら眉尻を下げた。けれどすぐに口角を上げて、私に手を差し出してきた。
「それじゃあ、契約成立だ」
「よろしくお願いします」
私はその手を軽く握って、同じように笑ってみせた。眉尻を上げて、凛々しくて強気な顔つきを意識する……できているかな。
「これからプライベートでは典孝と呼んでほしい」
「では私も紗都美と呼んでください」
「そうだな……じゃあ、紗都美」
「はい」
「会場に戻ろうか」