王子様だけど王子様じゃない

 小会議室のドアをノックする音がした。


「どうぞ」


 私の許諾と同時に、久留さんがドアを開けて入ってきた。三、四人くらいしか入れない部屋に、ホワイトボードやパソコンを置いているから二人でもかなり手狭になる。


「メールしてみて良かったよ」

「……本当に、部長に掛け合ってくれるんですか?」

「それはもちろん」


 徐に近づいてくる久留さんに、「でもただではないんでしょ?」と彼の本心を突きつけた。


「話が早くて助かるよ」


 慣れた手つきで私の腰に手を回してきた。鳥肌が立つまま、疑問を投げかける。


「どうして私なの?」

「それは……前々からいいなって思ってたから」

「湯利上様との会議を一緒にセッティングする前から?」
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