王子様だけど王子様じゃない
「どこ、なん」
声は裏返るしちゃんと喋れてないし、これじゃエースの肩書きが台無し。まぁ台無しにしているのは彼自身なんだけど。
「今の言葉は、どうして湯利上家の娘と婚約しているのがバレてるんだ、でよろしいですか?」
私が淡々と問いただすと、久留さんは目を見開いて口元をひくつかせた。
そう、私が持ってきた資料は、久留さんと湯利上家──社長と懇意にしている旅館の経営者──の娘である、希美さんとの婚約ついて、詳細が記載されたものだった。
「久留さん、湯利上旅館がある地方のご出身だったんですね」