王子様だけど王子様じゃない
なるほど、私はカムフラージュだったと。
「そんな都合の良いことができると思ってるんですか?」
私はパソコンの画面を久留さんに向けた。久留さんの喉から空気が抜けるような音がして、顔色が白を通り越した色になった。
『敬助くん、これは一体どういうことかね』
画面に映る初老の男性が、眼鏡を白く光らせている。その隣りにいるのは、優しい目鼻立ちをした和服美人だ。
『全部、最初から聞いたわ』
彼女が──希美さんが震える声で唇を歪ませた。
もう言い逃れはできない。湯利上様と希美さんがこの場ではっきりと聞いた以上は、それなりの処分が下されるだろう。
リモート完備の会社で良かった。こういうことに使うものではないのだけど、無かったら久留さんは周囲を上手いこと言いくるめていたに違いない。
須藤さんに目配せをし、待機していた男性社員を呼ぼうとした、その刹那。
「このブスがっ!」