王子様だけど王子様じゃない
久留さんは地方に左遷となった。
湯利上旅館がある地方への左遷だが、希美さんとの婚約は破棄。慰謝料は請求しないそうだが、せめてもの温情だろう。
ただ、湯利上様は地元の名士であり、今回の事件は地元全体に広まっている。そのため久留さんとそのご家族は地元全体で監視され、肩身の狭い思いをしながら生活しているそうだ。
さらにこの件で危うくなるかと思われた湯利上様との仲だが、それは杞憂に終わった。これからも互いに協力することで合意したそうだ。
しかし営業部はこの不祥事で大打撃を受け、有償派の勢力は衰えてしまい、無償派が今後は舵を取る方向で固まった。これにて一件落着。
「それは……お疲れ様でした。ホントに」
私は君嶋さんと事の顛末を話しながら、社食でのんびりとマカロンを貪っていた。ここで買ったものではなく、須藤さんから丁寧な謝罪と共に渡された有名洋菓子店のマカロンだ。
「久留さんが希美さんと結婚する前で良かったよ……」