王子様だけど王子様じゃない
届いたメッセージを確認すると、例の同僚からの食事の誘いに、従姉妹から結婚式の招待、なぜか元カレからも復縁要請が送られてきた。今日は厄日なのか。お祓いを検討すべきか。
同僚と元カレにはもう付き合ってる人がいるって言っておけばいいか。でも従姉妹の結婚式はどうしよう。
美しいがどこか儚げな従姉妹の顔を思い浮かべる。それと同時に、彼女の親の顔まで浮かんできて、ただ下がりだった気分がどん底のさらに底へと下がった。
『さっちゃんには絶対に来てほしいの』
メッセージにはそう表示されていて、行きたくないのに行きたくなってしまう。でも必然的にあの夫妻に会うわけで……。
私は盛大にため息を吐きたくなったが、ここは電車だし、家に着くまで我慢……というか、もう何も考えずに寝たい。夜になったら親に相談すればいいか。
スプリングがよく効いたシートで、ガタンゴトンと一定のリズムが振動になって伝わってくる。下りの電車は人も多くなくて、アナウンスだけが響き静かなものだ。
昨日の夜から朝にかけての狂乱が嘘のようだ。
……全部、嘘だったらいいのにな。
あくびを噛み殺す私を乗せて、電車は最寄り駅のプラットフォームに滑り込んだ。