王子様だけど王子様じゃない
「いかがでしょうか?」
鏡には、可愛らしくも上品さを兼ねそろえた女性が映っていた。
丸っこい顔はシースルーバンクの前髪や、縦を意識した後れ毛で緩和されている。丸い瞳はそのままに、つけまつ毛で普段の二倍は大きく潤んでいるように錯覚してしまう。
淡い青のドレスはAラインで、お淑やかな印象を与える。ミモレ丈なのも足が短く見えなくていい。Vネックで細やかなレースは袖にまで及び、二の腕を優しく覆っていた。
背中は大胆に開けられていて、猫背にはなれないといい意味での緊張感が身の内から湧いてくる。控えめな銀のアーモンドトゥがそれを支えてくれるような気分になった。
まとめると、「控えめに言っても最高!」だった。
「素晴らしい……!」
典孝さんまで目が輝いていた。その表情が落胆ではなくて、私は眉間にそれとなく入っていた力を抜く。
「須藤さん、本当にありがとうございました!」