王子様だけど王子様じゃない

「は……」


 つい間抜けな声が漏れてしまった。ヤバいと思っても、一度口から出てしまえば戻しようがない。


「母さん、あまり彼女を困らせないでくれないか?」

「だって貴方、お見合いしろって勧めても断るし、恋人を作れって言っても今はいいって言うし」

「だから連れてきたんだ」

「それならそれで、早いとこ身を固めてほしいって父さんも心配してるのよ?」


 彼女は憮然とした調子で、「見合いを断るこっちの身にもなってちょうだい」と小言を口にした。ここだけ切り取れば普通の親子だなぁと少し気が抜ける。


「またうるさいのか? ほら、あの……親の押しがやたら強い……」

「彼女のところなら平気よ。先日に別の方と婚約したと連絡があったわ」


 寛子夫人は目を眇め、「あからさまに話を逸らさない」と声を低めた。さらに、「彼女の前でずいぶんと無神経ね」と青筋が額に浮かべる。


「いえ、あの、私は大丈夫ですから」


 剣呑な雰囲気に思わず割って入れば、寛子夫人は米神を揉んだ。


「ごめんなさいね、そう言うしかないわよね」

「気を回さなくても大丈夫だよ、全部終わったことだから」

「原因は貴方でしょう」


 母親にぴしゃりと叱られた典孝さんは、私の両肩に手を置き真剣な目を私に合わせた。
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