王子様だけど王子様じゃない

「社長……この度は、おめでとうございます」

「ああ、ありがとう。最高のプレゼントだよ」


 社長は目を潤ませて私の手を握った。プレゼントなんて贈った覚えなどなくて首を傾げると、目尻のシワをさらに深くした。


「こんなに綺麗な婚約者を連れてきてくれたんだ。プレゼント以外の何物でもないよ」

「ちょっと、それは俺に言う台詞じゃない?」


 典孝さんが社長と私を引き剥がしながら片頬を歪ませた。目は全く笑っていない。


「邑田さんが承諾してくれたからこそ結婚ができるんだろう」


 社長がむすくれた表情で、「散々待たせておいて」と文句をつけた。


「だが邑田さんなら安心だ。貴女のおかげで、我が社は無償を基本的な方針にできた」

「俺も協力したんだけど?」

「邑田さん、妻共々、紗都美さんと呼ばせてもらっても良いかね?」

「話を聞け!」


 コントのようなやり取りに、ギャラリーは興味津々になっている。なんならあちこちから「おめでとうございます!」「いや二重にめでたい」という声が上がり始めた。

 そうだ、柚月ちゃん。
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