王子様だけど王子様じゃない
きょろきょろと辺りを見回せば、柚月ちゃんと良輔の背中が目に入った。こちらをまだ睨みつける良輔を、柚月ちゃんが引きずっている。
長い黒髪を下ろし、右肩に流した髪型。マーメイドラインのロングドレス。
ため息が出るほど美しいのに、その顔は悲痛に歪み、なんだか顔色も悪いような気もする。
「……そろそろ会場に移動しよう」
典孝さんに囁かれて、私は自分が置かれた状況を思い出し、引きずるように足を動かした。
「言っておくけど、本心だから」
私にだけ聞こえるように落とされた声。
これは……終わった後で長時間の話し合いだ。私の直感がそう告げていた。