王子様だけど王子様じゃない

 予想だにしないハプニングがあったものの、パーティーは大成功に終わった。

 社長夫妻から代わる代わる「息子を頼む」と頭を下げられ、客人全員に婚約者として挨拶を交わし、時に見定めるような目つきに耐え、嫉妬からのじっとりした空気を受け流し。

 それでも隣りに典孝さんがいてくれたから、私は最後までしっかり立つことができた。

 その典孝さんに連れられて、私は今、彼の自宅マンションにやってきていた。


「適当にくつろいで」


 部屋の奥でいつものスーツに着替えさせてもらい、ダイニングキッチンへと顔をのぞかせる。彼はそこでコーヒーの準備をしながら、砂糖やミルクをテーブルに乗せていた。

 セットしていた髪を崩し、ジャケットを脱いでネクタイを外した姿は年相応の若者に見える。さっきまでお偉いさんと談笑していたのが信じられない気分だ。

 私もその隣りにいたんだよな……と黒いスカートを見下ろして、クリーム色の椅子を引いて座る。話さなければならないことを、頭の中でまとめたかった。
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