王子様だけど王子様じゃない

 披露宴の会場はとにかく贅を尽くしたのが丸わかりの、絢爛豪華な様子だった。なんと言うか……ギラギラしすぎて若干引く。

 典孝さんはおじさんやおばさんに捕まっていた。来賓に挨拶するのはいいけど、典孝さんに構いすぎだ。彼が副社長だからってその扱いの差はどうかと思う。

 そもそも、花嫁に一度も声をかけに行かないってどうなの。自分たちこそが主役、みたいな顔で仕切ってるけど、これじゃ誰のための披露宴かわからないじゃない。

 良輔は新郎側の客人相手に忙しくて、こっちを気にする余裕もない。それでも時折鋭い視線を典孝さんに向けている。

 花嫁側には誰も声をかけに来なくて、ただ一人でひっそりと息をしていた。そんな異様でしかない披露宴を、司会の方が妙に明るく進行する。


「それでは、皆さまお待ちかねの余興となります」


 それぞれの親族や取引先が席に戻るのを見計らい、司会の男性は朗らかに告げた。


「はじめに、新婦様の従姉妹である邑田紗都美様と婚約者の池部典孝様からのビデオメッセージをどうぞ」
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