王子様だけど王子様じゃない

 白いスクリーンがじりじりと高砂の裏に現れ、来客たちは「池部?」「コンクラーウェ社の?」と囁きあっているのが聞こえる。典孝さんは鼻高々の平山夫妻にひっつかれ、あれこれ話しかけられていた。

 さぁ、このサプライズを楽しんでちょうだい。


「あれ……?」

「なんだ?」


 和やかなビデオを期待したのだろう観客は、不審な空気に包まれて囁きあう。

 無理もない。地方銀行の重役である新郎の父親──良輔の養父が、議員さんたちと秘密の会合を開いている動画なのだから。


「あれ献金じゃない?」


 誰かが何の気なしに呟いた。それが波紋となって会場中へと広まっていく。「え? 裏金とかそういう……」「確かに噂はあったよな」と騒めきは一層大きくなって、養父はもとより良輔の顔にも冷や汗が流れ始めた。もしかしたら知っていたのかもしれない。

 会場のスタッフさんが、止めようとプロジェクターのリモコンを手に取る。それを押しとどめたのは何とおじさんだった。厳しい顔でスクリーンを見つめていたが、その顔が真っ赤に染まった。
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