王子様だけど王子様じゃない

 今度は良輔の養母が映し出されていた。若いイケメンと腕を組み、デレデレした顔でラブホテルへと入っていく。悲鳴が上がったテーブルを見れば、養母が真っ青になって倒れていた。

 おばさんは典孝さんの手を握りながら頭を何度も下げている。典孝さんはそれに対して首を横に振っていた。感謝でもしているのだろうけど、これで終わりじゃない。

 今度はおじさんの顎がつま先まで届かんばかりに落ちた。


「あれ、確か秘書の……」


 誰かの声が聞こえてくる。私はバレないようにほくそ笑んだ。

 そう。根本家だけではなく、平山家の不祥事も録画して流したのだ。

 おじさんが秘書にセクハラしている場面や、取引先に賄賂を送っている場面。

 おばさんが社員たちを私用でこき使い、女性はいびって若いイケメンには迫る場面。

 披露宴はたちまち阿鼻叫喚に包まれた。


「紗都美さん!」


 典孝さんが人混みをかき分け、私に手を伸ばしてきた。“角隠し”を疎ましく思いながら、私も両手を伸ばして抱きついた。
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