王子様だけど王子様じゃない

 後から知ったのだけど、良輔と久留さんは大学時代の友人で、久留さんから私の仕打ちを聞いたらしい。そこで良輔は、結婚式に呼んで恥をかかせてやろうとして当てが外れた……ということだった。


「ベッドで他の男の話はマナー違反じゃないか?」


 典孝さんが意地悪く腰を揺すった。目の前が白く点滅して、身体が仰反る。


「典孝さん、あの時、良輔と別れるから柚月ちゃんと結婚してって言われてたでしょ?」

「……聞こえてた?」


 顔には「嫉妬されて嬉しい」と書かれている。かわいい。だけどそれ以上に、汗で肌が上気している姿は艶めかしくてくらくらする。


「あの二人の言いそうなことならわかります」

「そうか……」


 典孝さんは私を抱きしめ、「もうそんなことは絶対にないから」と耳朶を甘噛みしてきた。目をつむって、背中に腕を回し堪える。


「柚月ちゃんは、父と母に協力してもらって自立のために働くそうです」

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