夙夜夢寐


「みんなー!注目してー!」


久石くんの声はここにいる誰よりもとおりやすい声なんだと思う。

みんなかこっちに注目してる。

こういう暴走族って意外と真面目だよね。

久石くんは顎でクイっと私を指した。

……なんか腹立つ。

自己紹介したらいいって言うことだよね。


「はじめまして!」


私はまるで学校の先生と話すように声を少し高くして、明るい私を演じる。


「私の名前は彩葵です!……この後予定があるのになぜかここに誘拐されてめっちゃ困ってます。この人たちどうにかしてください、正直に言うとほんとに迷惑!……私は皆さんとよろしくするつもりもありません、もうここにもきません」


ふぅ、言いたいこと全部言えた!

横に並んでいる人たちからは若干殺気が出ているように感じる。

私は、胡桃にウィンクをした。


「胡桃って言います!彩葵は私のなので取らないでください、お願いします!」


……短い。

私は胡桃のものじゃないし。


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