夙夜夢寐
今日の授業はいつにも増して簡単だ。
教科は数学。
パパっとワークを解き終わった私は、頭を悩ませながら問題を解くクラスメイトを観察していた。
「あれ?……渡邉さん、もう解き終わったの?」
手を動かしていない私をみて先生が近づいてきた。
「はい!もう解き終わっちゃいました!この辺の範囲は前の学校でやっていたので……!」
胡桃と話すときよりもテンションは高く愛想良く。
敬語はしっかりと使うこと。
当たり前、これは当たり前、みんなのようにタメ口で話すことはダメ。
いつでも私は優等生でいないといけない。
「そうだったのね、この学校に来る前は確か偏差値80ほどの学校だったのよね?」
「そうです…!2ヶ月とかあっという間です、学校にもすっかり慣れましたよ〜」
私はこの学校に2ヶ月前に転校した。
高校三年生で転校とか普通はないけど、とある事情で転校。
今のクラスメイトにも、なんで!?みたいな顔をされた。
「じゃあ渡邉さん、問1、2の答えを黒板に書いてくれる?」
「分かりました!」