モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
「そうよ。私じゃ、その気にならない?」
「まさか、いい女だなってずっと見てたよ」
腰を抱かれて耳元に甘い吐息のキスをされると、ゾワリと身体中に甘い電流が流れたように肩をすくめて身震いする。
そこから、男のペースでこのホテルまで来て、受付を通さずに、この部屋まで一直線だった。
初めてあった女を愛しむように抱いてくれた男。
そして、今は、欲望のままお互いに抱き合っている。
男がベットを背にして倒れ、肘をついて手を握ってくる。まるでジェットコースターに乗っているかのようで、終わりに向かって加速する私達。
そして、男の胸に倒れた私を愛しというように抱き止めて、呼吸を荒げたまま抱き合ったのだ。
名も知らない男に、私の疲弊していた心は少しは救われた気がして、涙を流していた。
「泣いているのか?」
「嬉しくて」
「そうか⁈なら、いいんだが…」
ぽんぽんと頭を撫でる手が優しくて、恋に堕ちそうになる。
この人と恋をしたら、幸せだろうな…
だけど、この男にとって私など通り過ぎて見過ごしていく野花のようなもの。
お互いの名前を知ろうとしない時点で、ひと時の戯れなのだ。
ただ、たまたまそこに私がいただけで…