モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて

「そうですね。お元気そうで何よりですわ」

テーブルを挟んで、叔父の顔を見ようとしない義母。

叔父が会社の相続をした件で、もめたことを根に持っているのだろう。

「ご相談とはなんです?」

「…実は、東雲ホールディングスの傘下に入ろうと思ってます。そこで、向こうから親戚にならないかと、…とりあえずは、顔合わせのようなお見合いを、その一華ちゃんにきてるんだけど、どうかな?」

「東雲⁈大手じゃない。うちの一華を見初めてくれたのね」

ご都合主義の義母に、叔父と私は顔を合わせて苦笑し、とりあえず頷いておく。

「東雲の御曹司って、表に出てこないのよ。どこで会ったのかしら?写真はないの?」

「まだ、話の段階だからないんだ。正式にお返事すれば、釣書を頂けると思う」

「なんだ…先に顔を見たかったのに」

頬を膨らませる一華が、難色を示すように顔を背ける姿に、義母は、宥めるような声でご機嫌をとりだす。

「…あの東雲よ。そこの奥様になれたら、旅行もショッピングもお金を気にすることもないわ。一華、悪い話じゃないわよ」

この2人が、お金を気にしたことなどあっただろうか?
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