モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
だが、家の状況が厳しいと義母もわかっているから、東雲の話に乗り気なのだろう。
「そうだけど…」
顔も知らない相手に、あまり乗り気になれないらしい。
「会うだけ会ってみたら、どう?一華の可愛さに一目惚れしてくれるわ」
「えー、それはそうなんだけど。一華は、結婚するなら、かっこいい人がいい」
叔父の前でも、自分のことを名前で呼ぶ姿は、とても、一つ上とは思えない幼さに呆れるばかりだ。
「お見合いを受ければ、釣書は頂けるんでしょ⁈」
「お受けすれば、頂けるはずだと思うけど」
「一華の可愛いお見合い写真をたくさん撮りましょう。お着物にする?ドレスにする?一華なら、どれを着ても可愛いんでしょうけど…釣書を見てから、また話して決めましょう」
さすが母親なだけあり、娘の操縦は容易く、一華は、乗り気なる。
「そうね。釣書を見てから、また、どうするか考えればいいわね」
どこまでも、ご都合主義の親子に叔父も渋い表情でいた。
話を受けてしまえば、こちらから断れる身分ではない。
私と叔父が誠心誠意で謝ってこなければならない最悪な状況だけは避けたいものだ。
だが、その予感は的中してしまう。