モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
一華の釣書は早々に送られてお見合いの日も決まった。だが、向こうからの釣書がなかなか来ず、明日、お見合いだという日になってやっと、釣書を差し出した叔父から、素早く奪った一華は、経歴よりも真っ先に顔写真を確認している。
「…な、に?この人なの?キモい…無理、無理。嫌よ」
放り投げた写真を見た義母も、眉間を険しくさせて、テーブルにおいた。
「いくら東雲と言われても、うちの一華には、不釣り合いな方のようですわ」
テーブルの写真を見ると、黒縁メガネで目元がわからない長い前髪。ほぼ、口元しかはっきりしない。ダークブラウンの色合いの髪だが、スーツもサイズにあっていなく、ダボつき感があり、ネクタイも趣味の悪い柄で悪いイメージを増している。陰キャと呼ぶに相応しい容姿の男性だった。
叔父も初めて見たらしく、流石に言葉を無くしている。
お見合い写真なら、少しよく撮ろうとするだろうが、これが限界だったのだろう。
だから、ギリギリまで釣書を出すのを引き伸ばしたのだと。
「いや。絶対にいやよ。断って」
「会うだけでも…今後、傘下に入れてもらわないといけないんだ。そこをなんとか頼むよ」
お見合いを受けた以上、せめて会うぐらいしなければ、相手に失礼だ。